「今はバブルなのですか?」
「今はバブルなのですか?」
日経平均が年初来高値を更新する、つまりバブル崩壊以後の最高値を何度も更新するにつき、そのように質問されることが増えてきました。
もちろん私は素人なので、確かなことは分かりません。それでも、諸状況を定義に照らして考えてみると、おそらく今はバブルではないと言えます。
バブルというのは、その定義上、あるセクターや商品、銘柄が実態以上の評価がなされ、そこに値上がりを当て込んだ投機的資金が流れ込み、値上がりが値上がりを呼ぶ状態です。よって、近世の南海泡沫バブルやチューリップバブル、1980年代の日本の不動産バブル、21世紀初頭のドットコムバブルがそうであったように、ある一部のセクターや商品、銘柄が値上がりするだけで、世界全体で見ると、その他の物価や資産は値上がりをしていません。
一方、現在はどうでしょうしょうか?
コロナ禍にもかかわらず日米欧の株式市場は史上最高値圏を推移していますが、飲食や旅行、百貨店などは困窮し、中小企業の倒産や廃業が続き、失業率は上昇、GDPも記録的な減少を示しています。この点を以て、今の株式相場は大量の緩和資金によって引き起こされたバブルだと指摘する識者が多数です(つまりいつかは弾ける)。
緩和資金が株式相場を押し上げているというのは事実です。また、日銀やGPIFといった政府系の機関が不自然に買い支えているのも事実です。しかし、私たちはもっと視野を広くすべきかもしれません。
価格が上昇しているのは株式だけではないのです。メディアや大衆心理を「コロナ恐慌」という鵺が覆っているのをよそに、資源価格は上昇を続けています。電気自動車の心臓部となる電気コイルの原料である銅は、すでにリーマンショック前の高値に近づきつつあります。欧米の不動産価格は上昇を続け、日本の不動産も底を打ちました。私たちの身の回りでは、食料品や日用品の値段は止むことなく上昇を続けています。自動車や耐久消費財の中古相場も上昇中です。
端的に言って、世の中では価格が下落しているセクターが存在するどころか、価格が上昇していないセクターを見つけることが難しくなりつつあります。
つまり、価格が上昇しているのは株式相場だけではないのです。よって、定義に従い、現在の株式相場はバブルではないということになります。
バブルでないのならば、一体何なのかということになりますが、天文学的な金額の緩和資金によりインフレに向かっていることは現状が示す通りです。それが電気自動車のような次世代のイノヴェーションを呼び水に経済成長をもたらす「良性」のものなのか、それともコロナ禍と複合してスタグフレーションをもたらす「悪性」のものなのかは分かりません。
ただ、予想はつきませんがケース分けは可能なので、それについては稿を改めたいと思います。
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