「はじまりのはじまり」 歴史における2020年12月12日の現在位置

 日経平均がバブル後の最高値を更新し、ついに「平成」が終わりました。ただし、ここで言う「平成」とは元号としての平成ではなく、経済社会システムとしての平成です。

 平成が令和に変わる時に指摘したように、平成の三十年間は1980年代後半の繁栄の夢よ再びと願いながら、戦後日本をその発展へと導いた経済社会システムを温存し続けた停滞と現状維持の時代でした。

 その三十年の間に世界は変わりました。

 日本が得意としていた産業分野は新興テクノロジー産業の後塵を拝し、かつては後進国だと見下ろしていた国々は成長を遂げ、日本を脅かす、もしくは追い越すまでになりました。

 つまり、かつて日本を繁栄に導いた戦後の経済社会システムは時代遅れになっていたにもかかわらず、1960年代の高度経済成長と1980年代のバブルの成功体験から、夢よもう一度とその古いシステムに日本が固執しているうちに、世界ではゲームチェンジが進行してしまったのです。

 しかし、過去の栄光に対する憧憬に縛られていた「平成」は終わりです。

 今、コロナ禍による混乱、従来の貨幣概念を覆すほどの資金供給、そして電気自動車と次世代ITによるゲームチェンジが三つ巴になって、日本を三十年間停滞させた元凶である時代遅れの経済社会システム、すなわち古い体質の企業、組織、個人に対して未曾有の淘汰圧をかけています。

 たしかに、この淘汰圧は一時的に経済社会的な混沌を局地的に引き起こすかもしれません。場合によっては、新しいシステムが確立する前に、停滞とは言いつつも平成の三十年間日本を支えた古いシステムが寿命を迎えるかもしれません。けれども、宇宙の淘汰圧によってはじめて生物が進化し得るように、社会システムも外から淘汰圧にさらされて初めて自己更新機能が活性化するのです。その点で、日本の産業と人材のポテンシャルを考えると、2020年の淘汰圧は日本に止めを刺すものではなく、最終的には再び世界基準で戦える自己変革をもたらす絶好の契機なのではないでしょうか。たとえ、その過程では血を流すことになっても。

 日経平均がバブル後の最高値を突破したのは偶然ではありません。

 というよりは、本当は「最高値」ですらないのです。それは古いシステムについた値段としてはその最高値に見えますが、もしこれから日本が淘汰圧によって進化するとするならば、それは来るべき新しいシステムについた値段としては「初値」であり、もしかしたら最安値かもしれません。

 もちろん、先述のように環境の変化に進化のスピードが追いつかなければ日本は没落の21世紀を迎えます。つまり、今は「終わりの始まり」です。一方で、淘汰圧を利用して旧弊を一掃し進化を遂げれば、繁栄の21世紀が待っています。つまり、今は「始まりの始まり」です。

 いずれにせよ、「平成」の三十年は終わり、私たちは今まさに歴史の分岐点に立っているのです。そして、私は楽観的な人間なので今日この日を「始まりの始まり」だと信じています。

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