歴史の感覚1(2019年11月19日記)
大学受験の世界史では、最後には現代史に至ります。そして、現代史を教えていると奇妙な感覚に捉われます。それは自分が実際に見聞、経験してきた、自分にとっては共時的な「出来事」が、教科書の中では史実として記述されているからです。
今年は第一次大戦が終わってからちょうど百年、第二次大戦が勃発してから八十年という節目の年です。しかし、考えてみれば自分が生まれた時にはまだ第一次大戦の終結から五十年しか経っていませんでした。第二次大戦に至っては終戦からほんの二十四年、当時はまだ史実というよりは「近年の出来事」だったのです。
要するに、自分が生きているうちにいつの間にか半世紀の年月が流れ、かつては「出来事」であったものが「史実」に変わり、人々の記憶の中から本の中にしまわれていったのです。
そこでふと思い立ち、この半世紀の間にどんな「出来事」があったのか、記憶の中から回顧してみました。
私は1971年の生まれですが、さすがにベトナム戦争やオイルショックの頃は、物心がついていなかったので共時的な記憶はありません。そこで、ニュースや新聞を気にするようになった、小学生当時の記憶から辿っていきたいと思います。
「半世紀の記憶 1971-2019」
1979年 イラン革命/ソ連によるアフガニスタン侵攻
1980年 イラン・イラク戦争/ポーランド自主管理労組「連体」結成
/光州事件
1981年 なし
1982年 フォークランド紛争/レーガン大統領就任
1983年 大韓航空機撃墜/米軍グレナダ侵攻/ラングーン爆破事件
/アキノ暗殺
1984年 インディラ=ガンディー暗殺
1985年 ソ連のペレストロイカ
1986年 米ソ首脳会談(レイキャビク)/チェルノブイリ原発事故
/米軍リビア攻撃
1987年 第二次米ソ首脳会談(ワシントン)/ブラック・マンデー
1988年 なし
1989年 ベルリンの壁崩壊/冷戦終結宣言/米軍パナマ侵攻
/ルーマニア革命/天安門事件
1990年 クウェート侵攻/東西ドイツ統一
1991年 湾岸戦争/ユーゴスラビア紛争/ソ連崩壊
/ラジブ=ガンディー暗殺
1992年 なし
1993年 EU発足
1994年 ロシアのチェチェン侵攻
1995年 NATO軍、ユーゴ空爆/阪神・淡路大震災/オウム事件
1996年 なし
1997年 香港返還/アジア通貨危機
1998年 なし
1999年 なし
2000年 なし
2001年 アメリカ同時多発テロ/アフガン戦争/ITバブル崩壊
2002年 ユーロ流通開始
2003年 イラク戦争
2004年 なし
2005年 なし
2006年 なし
2007年 なし
2008年 リーマン・ショック
2009年 欧州債務危機
2010年 なし
2011年 カダフィ政権崩壊/東北震災
2012年 アラブの春/シリア内戦
2013年 なし
2014年 イスラム国建国
2015年 なし
2016年 イギリス、EU離脱国民投票
2017年 なし
2018年 なし
2019年 ?
このように時系列に並べてみて、改めて重大なことにいくつか気が付きました。
まず、この半世紀を概観すると、1989年の冷戦終結までは世界の至るところで毎年のように緊張が続いていました。1990年代は、米ソ対立の解消後、それまで冷戦によって押さえ込まれていた民族対立や宗教対立が噴出しました。いわば冷戦の遺構の後始末です。21世紀に入りそれがほぼ沈静化した後は、ずっと無風状態が続いています。1970から1980年代とは比べものになりません。
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