都立自校作校、大学進学実績の躍進は本物か?(2023年9月15日)
都内の世帯の高学歴化により、都立高校の生徒のレベルが上昇している結果、難関大学受験において私立中高一貫校の独占状態を崩しつつあると、昨年お話をしました。
果たして、その傾向は今年も続くのでしょうか?
まず、その前提である都内の世帯の高学歴化と、それに伴う都立自校作校生のポテンシャルの上昇に変わりはないと思います。それ自体は人口動態的な変動なので、一度動き始めたらすぐには止まらないからです。
ただし、その変動が進学実績に直接的に反映されるのを歪める変数が二つ存在します。
その一つ目はコロナ規制の解除です。2023年卒の高3生は、高校に入学した時にコロナ規制が始まった学年です。休校やオンライン授業で、学校に登校する日数が少なく、また部活や文化祭など時間を取られる学校行事が制限されたため、高校3年間、自分の時間を非常に多く持つことができた世代でした。2020年にコロナ規制が始まって以来、実はそれが都立自校作の躍進に寄与していた可能性は大いにあります。
事実、コロナ前とコロナ後の両方の高校生活を知るアカデミアの2021年卒、2022年卒の生徒たちは、コロナ規制で自分の時間が持てていなかったら、志望大に合格できなかったかもしれないと口を揃えて言います。
よって、都立校生の学力向上の真価は、コロナ規制が解除され学校行事・部活が正常化した今年初めて、客観的に問われることになるでしょう。もし、この都立高校の本来の環境下でも実績の向上が続くようなら、過去3年間の躍進は本物であったと考えて良いでしょう。
二つ目は、都立高校が生徒に出す課題の肥大化です。2021年に新学習指導要領が導入されてから都立高の課題の量が著しく増えました。しかも、進学とは無縁だった一般校においてさえ。さらに、すでにそれ以前から課題が多かった学校は、以前にも増して。過去25年間、都立校生の学習状況を見てきましたが、彼らがこれほどの学校課題に追われているのは前代未聞です。
本来、ポテンシャルの高い子たちは、必須の学習情報だけ与えて、後は好きなようにさせておく時、最も高いパフォーマンスを発揮します。実際、伝統ある中高一貫校はそうやって何十年にもわたって高い実績を出してきました。しかし、ここ三年の都立高の「ドリル&キル」方式の受験対策はその本来の在り方に真っ向から反しています。その山積みの課題も、機能すればまだ救いがあるのですが、内容が旧態然としているため、昨今の新傾向の大学入試対策としてはほぼ役に立ちません(日比谷を除く)。例えば、今この時代に文系理系を問わず古文や漢文の本文をノートに写させてくることに何の意味があるでしょう?最近では文系でさえ、古文漢文を出題しない大学が増えているというのに。慶応大に至っては国語すらありません。大学共通テストに出るから?そこまでして国公立大を受けさせたいインセンティヴは一体何でしょうか?
親の高学歴化により、都立自校作校の生徒のポテンシャルが上がっているのは間違いありません。ただし、はたしてその彼らを以てしても、山積みになった最適とは言い難い課題をこなしながら、尚且つ現代の大学入試で結果を出すことができるかどうかは分かりません。彼らと同等、もしくはさらに優秀な私国立の中高一貫校の生徒たちには、自分たちで勉強を決める裁量があるわけですから。それと比べると、少なくとも不利な立場に立たされているのは事実でしょう。
以上の理由により、躍進を続けてきた都立高校の大学進学力の今年はっきりと問われることになるのです。
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